ご挨拶

第24回日本褥瘡学会学術集会

会長 溝上 祐子

東京医療保健大学 大学院
プライマリケア看護学領域 設置準備室

溝上 祐子

このたび第24回日本褥瘡学会学術集会をパシフィコ横浜ノースにて開催させていただくことになりました。これもひとえに会員の皆様ならびに関係各位のご支援のおかげと心から感謝申し上げます。

本会を開催するにあたり、「褥瘡マネジメントの未来 ― 新たな価値の創造-」というテーマを設定させていただきました。日本褥瘡学会が設立した24年前の1990年代、医療は高度化・細分化の下、「治す」ことに注力してきました。学会も難渋する褥瘡をいかにして治すかを中心に議論していたことを思い出します。少子超高齢社会である現在、複数疾病を抱える高齢者が増加するなど疾病構造は変化し、地域・在宅において介護と連携した医療の推進という医療提供体制の転換を受け、「治し支える」医療に移行しつつあります。高齢者人口は2040年前後をピークに減少すると推定されていますが減少幅は大きくないため高齢化はさらに伸展するとされています。問題となるのは生産年齢人口の減少により、世代間の不均衡はさらに伸展することです。(現役世代人口:高齢者人口=1.5:1.0(人) 2040年推計)もはや医療ニーズが高い高齢者を医療現場だけで受け入れることは不可能に近く、医療者の数も確保困難となってきます。つまり、褥瘡管理の視点で見ると医療ニーズのある患者は重篤な感染や外科治療などを要する場合、短期間医療施設に入院しますがそれ以外は在宅や介護福祉施設等で診ていくことが通常になると想定されます。

また、医師の働き方改革に伴うタスクシフト・シェアの推進の影響を受け、全ての医療職の働き方が変化しつつある中、社会が求める看護の役割拡大への期待も高まっています。

こうした将来を見据えて、今、本学会員がタスクシフトやタスクシェアの実現を目指し、具体的に褥瘡マネジメントの在り方の議論を深めていくことが重要と考えています。

これまでは病院を主体とした治療や管理をそのまま在宅でも提供することを目指してきました。しかしながら、重症化を予防しその人らしい時を過ごすために提供する医療の価値観は病院と同じでいいのでしょうか。褥瘡を予防あるいは重症化させないように体圧を管理しながらも質の高い眠りを提供できないか。自分が寝たきりになったときに医療サービスを受けて心地よいと思えるかどうか。そうした考え方で新たな価値を創造したい。そう考えています。

さて、2020年以降世界中がCOVID19の影響を受けて、医療の場は混乱し、心身共に疲弊された方も多くいらっしゃったと思います。乗り越えられた皆様には敬愛の念と感謝の気持ちでいっぱいです。また、生活の場までが大きく制限され、人と人の触れ合う機会も語る機会も失われました。2022年の8月、できれば多くの会員が横浜の地に集まり、会員がチーム一丸となって、議論し、語りあうそんな場を提供したいと考えています。また、COVID19のおかげで学んだWeb学会のメリットを生かし、参加できない会員のためにも素晴らしい講演やシンポジウムなどのちにオンデマンドで視聴できるように計画しています。多くの会員の方の笑顔にお会いできることを楽しみにしております。

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